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スレッド試験とは?試験内容からデータ取得手法まで解説

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スレッド試験とは?試験内容からデータ取得手法まで解説

スレッド試験は、自動車のシートやヘッドレストの保護性能評価のための試験です。

この試験では主にシートベルトやエアバッグなどの安全装置の有効性を評価することが目的です。

本記事では、自動車の安全性能を確保するための重要なプロセスであるスレッド試験の役割、実施方法、そしてその結果の活用方法について解説します。

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この記事を書いているのは:株式会社ノビテック

ノビテックはハイスピードカメラPhantomを取り扱っています。
これまで自動車試験に技術提供してきた実績と知識から現場に近い目線で解説します。

スレッド試験とは?なぜ実施するの?

スレッド試験では、ダミー人形を載せて試験体をスレッド(台車)に搭載し、レール上を走らせて衝突させます。

高圧ガスを使用したピストンでスレッドを水平方向に打ち出して急激な加速度を与えることで、実際の衝突現象において試験体が受ける衝撃度合いを再現できます。

近年、電気自動車が増えてきましたが、EV用バッテリー周辺の強度評価や自動車内への各種取り付け部品の耐衝撃性評価等でも活用されています。

スレッド試験の代表的な試験対象

スレッド試験の対象となるのは、主にシートベルト、エアバッグ、チャイルドシートの性能です。

本項目ではそれぞれの対象についてくわしく解説します。

乗員に関するもの(シートベルト・エアバッグ)

 

スレッド試験の対象で一般的なのが乗員に関するものです。

乗員が強い衝撃を受けたときに、設計通りにシートベルトが機能しているか、エアバッグが適切なタイミングで機能しているかを確認します。

あわせて、ダミーのセンサーを用いて、頭部などにかかる負荷が致命的であるかなどを評価します。

 

子供(チャイルドシート)

 

チャイルドシートが子供をしっかりと守ることができるように、性能の評価を行います。

子供用ダミーを用いて、性能をテストします。

  • チャイルドシートはしっかりと取付部から外れていないか
  • 人体へどれくらい衝撃が加わったか

などを評価することで、より安全性が高く、安心して使えるチャイルドシートが開発されています。

バッテリー

電気自動車にはバッテリーが搭載されています。

そのなかでも特にリチウムイオン電池は燃焼すると鎮火しづらいことから、安全性の評価は必須です。

また、高圧電流であることから感電の危険性も考慮が必要です。

 

収集するデータの種類

スレッド試験で収集するデータには、以下のようなものがあります。

衝撃力と圧力

衝突時にダミー人形にかかる衝撃力や圧力を測定します。

ダミー人形のセンサーを利用して、頭部、胸部などに加わる影響を評価します。

人体への影響

クラッシュテストダミーに取り付けられたセンサーから、衝突時に人体に及ぼされる力やストレスを測定します。

頭部、胸部、腹部、四肢など、人体の各部位への影響が詳細に分析されます。

衝突時の映像

衝突の瞬間をハイスピードカメラで記録し、一秒間に数千枚~数万枚の単位で映像を収集します。

これにより、衝突の衝撃や車体の変形、ダミー人形の動きなどを視覚的に評価できます。

 

スレッド試験の撮影方法:ハイスピードカメラの使用

衝突の瞬間を正確に捉えるためには、最適な撮影速度、解像度を持つハイスピードカメラの選定が重要です。

フレームレートが足りない場合は必要な現象が撮れないことがあります。

また、照明の当て方によって画像が白飛びしたり、必要な箇所に照明が当たらず暗い画像になったりという懸念もあります。

当社では、実際に試験を行わなくとも、これまでの経験や実績からお客様のご要望に合った最適なカメラ設置、撮影設定、照明をご提案します。

現場では衝突時の揺れも懸念されますので、カメラの固定等も含めて課題解決に貢献します。

設置や撮影のポイント

カメラの設置位置や角度、照明など、撮影のための様々なポイントに注意が必要です。

衝突の際にどういった挙動をするのか、観察ポイントがどこまで動くのか、部品がどこまで飛ぶのか等をヒアリングし、カメラ位置、向き、設定を決めます。

また、試験体の上から真下を見る場合や、三脚や治具での固定が難しい場合はクレーン等の機材を使用し固定します。

破片がカメラに飛んでくる可能性がある場合は、アクリル等での防護が必要です。

ひずみ解析ソフトウェアでさらなる解析を行う

重点箇所の応力やひずみ分布を確認したい際、DICひずみ解析ソフトウェアが有用です。

あらかじめ観察箇所にランダムパターンを塗布し、現象をハイスピードカメラで撮影します。

画像をDICソフトウェアで解析すると、ひずみ分布が算出されます。

ひずみゲージでは、ゲージを複数貼る手間がかかる、貼ってから数時間待つ、ポイントでしか測れない、等のデメリットがありました。

このDICソフトウェアではカメラで見えている箇所であれば、非接触でかつ面で、数時間待たずにひずみ分布を計測できます。

カメラを2台設置し、ステレオ撮影を行えば、3Dデータでの解析も可能となります。

動画のみならず、変位の波形データ、STLファイルへの出力もできるので、CAEへのフィードバック等も可能です。

よくある質問

本項目では、スレッド試験に関するよくある質問に回答します。

 

スレッド試験で使用される機器は?

スレッド試験では、

  • クラッシュテストダミー
  • ハイスピードカメラ
  • センサー
  • スレッド型衝撃試験機

が用いられています。

クラッシュテストダミー

人間の代わりとして使用され、頭部、胸部、腹部、四肢にセンサーが取り付けられています。

種類としては、成人ダミー(男女)、子供ダミーなどがあります。

クラッシュテストダミーは、アメリカの安全基準規格の「NHTSA」やヨーロッパの安全基準規格である「EuroNCAP」があります。

出典:https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/02assessment/index.html

ハイスピードカメラ

衝突の瞬間を映像として取得するのがハイスピードカメラの役割です。

ダミーで取得できるのは各部位のデータですが、画像データで残すことが出来るハイスピードカメラにより、シートベルトやエアバッグの挙動を数万分の1秒単位で取得できます。

また、耐G性を持つカメラであれば衝突時の衝撃にも耐えるため、車に取り付けて間近から現象の撮影も可能です。

センサー

車体やダミーに取り付けられ、衝撃力、圧力、加速度などのデータを収集します。

加速度計や衝撃センサー、圧力センサーが用いられ、それぞれのデータをロガーで時間軸を同期して計測する。

スレッド型衝撃試験機

スレッド(Sled)は日本語で直訳するとそりですが、実際には大型の台車です。

台車を水平方向に所定の速度で発射することができる装置で、台車の上にシートや車体の一部を乗せることで衝突を模擬することができます。

茨城県つくば市にある日本自動車研究所(JARI)にあるスレッド試験は射出速度10~50km/h 最大加速度50G(試験品560kg搭載時)で実験することができます。

衝突試験の結果はどのように活用される?

スレッド試験の結果は、自動車の安全性能の向上と安全装置の設計の改善に活用されます。

より安全な製品を設計するために、衝突試験で得られたデータをもとに、設計改善が行われます。

 

消費者への情報提供

衝突試験の結果は、消費者が自動車の安全性能を理解し、購入決定を行う際の重要な情報源となります。

安全性評価の結果は国土交通省の自動車アセスメント情報として公開されており、5つ星評価で簡単に比較することができます。

 

公共の安全政策への貢献

衝突試験のデータは、道路交通安全政策や自動車安全規制の策定において重要な参考情報として用いられます。

スレッド試験は自動車の安全性を向上させ、道路上での事故のリスクを減少させるための基盤を提供します。

自動車メーカーはこれらの結果を基に、より安全な車両の設計、製造、そして改善を行っています。

 

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