鋳造の温度計測の手法や注意点を解説

本記事では、鋳造の温度計測に関して、計測手法やそのメリット・デメリットについて解説します。
鋳造とは?

鋳造とは、金属を溶かして液体にし、特定の形を持つ型に流し込んで固めることで、様々な形状の金属部品を作る製造方法です。
鋳造では、複雑で精密な形状の部品を効率的に作ることができ、削り出しと比べて母材のロスを減らすことができます。
身近な例ではマンホールや自動車のエンジンパーツなど、日常的に使われる多くの金属製品は鋳造によって作られています。
鋳造における温度計測の重要性
鋳造プロセスで温度計測を行うことは、品質管理において重要です。溶かした金属の温度が高すぎたり低すぎたりすると、製造時に欠陥が発生することがあります。
たとえば、温度が低すぎると溶かした金属を型に入れた際に想定よりも早く冷え固まってしまい、充填がうまくいかないことがあります。
また、溶融時の温度は金属組織の構造にも関係するため、想定した通りの硬度などが確保できない場合があります。
主な温度計測手法
本項目では、鋳造時の温度計測手法を解説します。特に、溶融状態での計測に関して解説します。
- 熱電対
- 放射温度計(スポット)
- 温度計測カメラ(面・画像)
熱電対
熱電対とは、2種類の金属線の先端を接触させることで回路を作り、その接合点の熱起電力から温度差を測定する温度センサのことです。
直接、溶融金属に挿入して温度を計測するため、計測したい点の正確な温度計測を行うことができます。値段が数千円~と非常に安いこともメリットとして挙げられます。
一方でデメリットとして、人が作業する場合は計測位置がばらつくことによる計測結果の精度問題や、そもそも高温金属の近くで作業する危険性があります。
放射温度計(スポット)
放射温度計は、非接触型の温度計測装置です。物体から放射される赤外線放射を検知し、その強度を元に温度を算出します。
非接触で温度計測を行うことができるため、熱電対と比べて安全に計測を行えます。
デメリットとして、1℃単位での正確な温度計測は苦手です。
また、放射温度計を使用する際には、放射率がわかっている必要があり、ほとんどの場合は正確な放射率がわからないため、精度はさらに悪くなります。
温度計測カメラ(面・画像)
放射温度計がスポットの温度を計測するのに対して、熱画像計測では画像で残すことに特化しています。主に単波長と2波長を使っているものに分けられます。
単波長を取得しているカメラは一般的にサーモビューワと呼ばれています。
サーモビューワは設計がシンプルなため比較的安く購入することができます。一方でスポットタイプの放射温度計と同じく放射率の設定が必須です。
それに対して2波長を使っているものは2色式と呼ばれています。2波長のエネルギーの比率を見ていて、放射率がわからなくても温度を計測することができます。
従来の鋳造温度測定方法の問題点、注意点
鋳造における従来の温度測定方法にはいくつかの問題があります。
放射率の変動
放射率とは、物質が放射する熱放射の強さを表す物理量です。
放射率とは、黒体からの熱放射を1とした場合の一般物体からの放射のしやすさを0~1で表したものになります。
放射温度計は、検知した赤外線放射の強度に、放射率を係数として組み合わせて温度を算出します。そのため、放射率がわかっていないと正しく温度を計測できません。
ですが、放射率は金属の種類や表面状態、距離、角度によって異なってしまうため、ほとんどの場合放射率がいくつか正確に知ることはできません。
放射率について詳しくは、「放射率とは?原理から計測方法まで徹底解説」で解説しています。合わせてご覧ください。
部品の消耗
熱電対などの接触型センサーは、高温金属に直接触れるため、損傷が発生します。
正確な温度計測を行うためには交換やメンテナンスを行う必要があります。
これに対して、非接触式は基本的に消耗によるメンテナンスコストがほとんど発生しません。
温度計測のばらつき
作業者によって計測位置が異なってしまうことでばらつきが発生することがあります。
ある作業者は炉の浅いところを計測していて、また別の作業者が深いところを計測している場合、温度にばらつきが生じます。
また、スポットタイプの温度計も、位置によってばらつきが生じやすく、温度計の位置を固定するなどの工夫が必要です。
作業者の安全性
鋳造プロセスにおける温度測定は、危険が伴います。
温度計測時に物体に近づく場合、やけどの危険性があります。また、そもそも作業現場の雰囲気温度が高く、熱中症などのリスクが伴います。
金属蒸気など有害物質の吸引を防ぐためにマスクをつけているため息もしづらく、作業者にとっては過酷な環境といえるでしょう。
2色式熱画像計測 システムThermeraによる温度計測
ここまで、従来の温度計測の課題を解説してきました。
そこで、当社の取り扱う温度計測カメラのThermera(サーメラ)ではそれらの課題を解決して安全かつ正確に温度計測が可能です。
放射率補正不要、2色式アルゴリズムを使用
鋳造では、温度計測時に高い精度が求められます。従来の温度計測では放射率補正が必要となりますが、Thermeraでは放射率を必要としません。
2つの波長の比から温度を算出する「2色式アルゴリズム」を使用しています。
安全な温度計測ができる
Thermeraではガラスを透過する可視域~近赤外の波長を使用しています。
そのため、従来のサーモビューワと異なり、観察窓越しの温度計測が可能です。
また、高級な赤外線透過レンズを使わないため、低コストで広角から望遠まで幅広い画角に対応しています。
そのため、カメラを安全な位置に設置でき、作業者自身も安全に温度計測ができます。
自動化につながる
Thermeraでは、温度をアナログ、デジタル信号で出力できるためPLCやシーケンサと連携した自動化に繋げられます。
アナログ、デジタル信号だけでなく温度データが保存された画像やCSVも出力できるため、トレーサビリティの観点からも有用です。
詳細な用途や製品の概要についてはカタログにまとまっています。
まとめ
鋳造プロセスにおける温度計測は、品質管理と作業者の安全性を確保するために非常に重要です。
従来の温度計測方法には、放射率の変動や計測位置のばらつき、作業者の安全性の確保など、さまざまな課題があります。
これらの課題に対して、2色式熱画像計測システムThermeraは、放射率補正不要の高精度な温度計測、安全な距離からの温度測定、自動化の推進といった多くの利点を提供します。
鋳造プロセスの改善をお考えの方は、ぜひThermeraのカタログをご覧ください。
製品に関するご質問や導入に関するお問い合わせは、お気軽にご連絡ください。