プラズマ合体によるリコネクション現象
ハイスピードカメラ Phantom TMX 7510 によるプラズマ合体の可視化
リング状プラズマの合体現象です。左右からの中央に進むプラズマとそれらが合体する様子を捉えています。太陽フレア等の高エネルギー現象の基盤物理として知られる、磁力線のつなぎかわり「磁気リコネクション」を地上の実験室で発生させる装置で、プラズマが合体する際に磁力線のつなぎ代わりが発生し、メガワット - ギガワットスケールの巨大加熱がプラズマ合体に伴って発生しています。リコネクション現象は合体中心面でミクロに開始する現象ですが、合体完了後には流体的な輸送現象や自己緩和現象を介してプラズマ内部の圧力分布がマクロスケールでも特徴的な構造を形成するグローバルな現象で、30万fpsでも高解像度で撮影が可能なハイスピードカメラ PhantomTMX7510により、ミクロ-マクロスケール双方の特徴をとらえた撮影が可能となりました。
プラズマ合体・リコネクション実験では、宇宙プラズマ現象を地上で模擬して体系的に研究する「実験室天文学」としての理学研究、そして解放されたメガワット - ギガワット出力の熱エネルギーの「核融合エネルギー開発」応用シナリオ開拓等の工学研究が並行して行われています。今後は新規リコネクション加熱実験やベンチャー企業を中心にリコネクション加熱応用が本格化するといわれています。
本事例では、プラズマ合体の様子をハイスピードカメラPhantomTMX 7510を用いて撮影を行いました。円筒座標系(r, θ, z) におけるθ方向へ周回するドーナツ型の形状で生成されるプラズマの可視化をはじめ、同構造が合体する過程、合体完了後にθ方向に回転するような特徴を示す発光の軌跡など様々な特徴が観測できました。輝度表示を合体中に最適化して表示した場合には、2つのリングプラズマが接触する際に、X点を形成してつなぎ変わる磁力線の特徴的な構造も瞬間的ながら可視化されています。合体の瞬間には、θ方向にビーム上の軌跡のようなものも観測されました。リング状の2つのプラズマ生成、合体・リコネクションを介した球状トカマクの急速立ち上げ、磁場閉じ込め運転への連結、の3つの現象を1ミリ秒以内に凝縮した同実験は、「広範囲」かつ「高速撮影」を同時に実現する必要がある従来の高速度カメラが苦手とする撮像条件でしたが、TMX 7510によって同現象を詳細にイメージングすることが可能になりました。
プラズマ現象は、高速現象であり、撮影速度が必要になります。本事例で用いたハイスピードカメラPhantom TMX 7510は、画素数640x384ピクセル時に撮影速度300,000コマ/秒での撮影が可能です。高解像で撮影ができることにより、高画質な画像が取得できます。そのため、ひとつひとつの小さな現象の詳細な部分まで、可視化し、より鮮明な解析、研究につなげることができます。またフル解像度1280x800とビニング時の640x384でほぼ同じ視野幅で撮影できるため、低速実験、高速実験も毎回の視野調整の手間を省いて撮影可能です。
機材セッティング
使用機材
ハイスピードカメラ Phantom TMX7510 モノクロ
機材名:ハイスピードカメラ Phantom TMX7510 モノクロ
撮影条件
・画素数:640 x 384ピクセル
・撮影速度:300,000コマ/秒
・露光時間:1μ秒
結果説明
画像提供:東京大学大学院 新領域創成科学研究科 小野研究室 田辺先生
真空容器内部のプラズマ現象を撮影するプラズマ実験では、一般に真空窓により高速度カメラの視野が制約されることが多く、短焦点カメラレンズで視野角をなるべく広くとる構成が取られます。従来の高速度カメラでは撮像速度を変化させると画素の使用範囲が中央の一部のみとなってしまうため、高速撮像するとプラズマ全体像をとらえられなくなる問題が生じます。binning機能で高速化が可能なTMX7510カメラでは、イメージセンサー使用範囲を大きく変更せずに高速撮像モードに切り替えが可能となったことにより、高速度カメラの配置を保ったまま全体像の高速撮像モードへの切り替えが可能となりました。
ノビテックではプラズマの可視化に適したハイスピードカメラのラインナップ各種を取り揃えております。各種デモやオンラインでのご相談も承っておりますので、こちらよりお気軽にご相談ください。