スマートフォンの落下は、ユーザーにとって最も身近かつ深刻な故障原因の一つです。
しかし、その落下衝撃により本体に加わる変形や応力の伝播過程は、肉眼では捉えることができません。
そこでこの事例では、ハイスピードカメラPhantom KT1640とDICによるひずみ解析ソフトウェアMercuryを組み合わせ、スマートフォンの落下時に生じる微小な変形を可視化しました。
1. 衝突直前:応力集中の予兆
落下直前の数フレームでは、スマートフォン本体(背面)にわずかな相対変位が見られました。
DIC解析により、端部の角に応力が集中し始める「予兆」のような動きが確認されました。
2. 衝突瞬間:局所的な変形領域の可視化
接地時、落下面との接触点を中心に、局所的な変形が一瞬発生。
その変形はフレームの特定領域に集中しており、ハイスピードDIC解析によってひずみマップ上に明瞭に可視化されました。
3. 衝突後:応力の伝播と緩和
衝突直後には、本体全体に応力が波のように広がり、数ミリ秒以内に一旦最大応力を示したのち、急激に緩和していく様子が観測されました。
特に背面側フレームに変形が残り、外観には表れない内部変形が存在することが示唆されました。
このようなDIC解析を通じた落下挙動の定量評価は、スマートフォンの筐体設計や材料選定における貴重な分析データが得られます。
またモノクロハイスピードカメラは色情報を排除することで、より高感度・高コントラストな変形検出が可能であり、精密機器や精密材料の衝撃応答解析に最適です。