楔に衝撃波が入射した際の衝撃波三重点の可視化
ハイスピードカメラPhantom TMX 7510 モノクロを使用し、斜め衝撃波反射現象の三重点の軌跡を捉えました。
これまで高フレームレート、高解像度での時系列での可視化が難しかった現象に対して、Phantom TMX 7510で軌跡を追うことが可能となりました。
可視化の概要
衝撃波が楔(くさび)に入射する際に発生する三重点の挙動をVision Research Inc.製ハイスピードカメラPhantom TMX 7510のモノクロモデルを用いて可視化撮影しました。
シュリーレン光学系で、点光源にはCAVITAR社製のCAVILUX Smart UHS50Wを用いました。
87万fpsで撮影し、衝撃波及び三重点の挙動がしっかりと捉えられています。
斜め衝撃波の反射現象とは?
斜め衝撃波の反射現象は、超音速航空機のインテークなど、流れの速度が音速を超える領域で現れる基本的な現象です。
本事例では、平面衝撃波が斜めに楔に入射した際の挙動を観察しました。
楔に入射した平面衝撃波の反射形態は、気体の輸送効果(粘性や熱伝導)を無視した条件では、楔の角度と衝撃波マッハ数が決まれば、正常反射(RR)かマッハ反射(MR)のどちらかに決まります。しかし、輸送的性質を有する気体中では、楔面上で RR から MR に反射形態が遷移することがあります。これを「斜め衝撃波の反射形態遷移」といいます。
斜め衝撃波の反射形態遷移は、気体の粘性の高さによって遷移点が変化することが知られており、気体の輸送特性によって遷移現象にどのような影響が現れるのかを調べることが重要です。
遷移現象を調査する際、下図1に示すような入射衝撃波 i と反射衝撃波 r、およびマッハステム m が重なる「三重点」の軌跡を調べることが一般的に行われます。本事例では反射形態遷移現象をハイスピードカメラを使用して可視化し、三重点の軌跡を解析しました。カメラは楔面に水平になるよう傾けています。
画像1は、ハイスピードカメラで取得したフレームを重ね合わせることによって得た三重点の軌跡です。正常反射からマッハ反射に遷移する点も正確に捉えられています。
画像1.三重点の軌跡(重ね合わせ画像)
使用機材
ハイスピードカメラPhantom TMX 7510 モノクロ
ハイスピードカメラ Phantom TMX 7510 モノクロ
撮影条件
- フレームレート:610,000fps
- 画素数:640×192ピクセル(ビニングモード)
- 露光時間 1μ秒
短パルスレーザー照明 CAVILUX Smart UHS 50W
結果説明
撮影協力:室蘭工業大学 畠中先生
楔を過ぎる衝撃波の可視化を行いました。
現象が速いため、点光源にCAVILUX Smart UHS 50Wを用いて、パルス幅10nsで照射しています。
それにより明るく撮影できるだけでなく、現象がブレずに軌跡を追うことができました。
本事例は「斜め衝撃波の反射形態遷移に関する研究 -楔先端の衝撃波入射条件による影響-」に掲載され、2021年度衝撃波シンポジウムで若手プレゼンテーション賞(Best Presentation Award)に選出されました。
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