自動車の衝突安全性能評価や構造物の耐衝撃設計において、衝突瞬間の速度変化や挙動を正確に数値化することは極めて重要です。
特に、時速45km(約12.5m/s)で走行する車両が構造物に衝突する場合、極めて短時間に大きな減速が生じます。
このような高速現象を正確に把握するには、高い時間分解能を持つハイスピードカメラによる撮影と、高精度な画像解析アルゴリズムによる動体トラッキングが不可欠です。
本事例では、自動車が車止めのポールに衝突する様子を、高精細なハイスピードカメラPhantom T1340(後継機種:Phantom KT1640)で撮影しました。
撮影された映像に対し、画像解析ソフトウェアMercuryを用いることで、非接触での速度計測および挙動解析を実施しています。
衝突現象の解析における課題
衝突現象の解析には、以下のような課題が存在します。
- 衝突直後の急激な減速プロセス(加速度変化)を詳細に算出するための十分なサンプリングレートの確保
- 衝撃による車体の微細な変形や振動の中での安定した特徴点追跡
- 接触式センサーの設置が困難な箇所や、多点における動的な挙動の同時計測
課題解決へのアプローチ
これらの課題に対し、ハイスピードカメラによる可視化とMercuryによるトラッキングを組み合わせることで、以下のような解決が可能となります。
Mercuryは、画像内のコントラストやエッジ、あるいはあらかじめ配置したマーカーを認識し、サブピクセル単位での高精度なトラッキングを行います。
1,000fpsで撮影された画像を用いることで、1ミリ秒ごとの位置座標を特定し、時間微分による速度および加速度の算出が可能です。
本事例では、車両がポールに接触する直前の等速走行状態から、衝突によって速度が急減する過程を連続的なグラフとして抽出しました。
本手法を用いることで、車体の沈み込みやリバウンドといった複雑な挙動も定量的に評価でき、シミュレーション値との比較検証(V&V)にも大きく寄与します。





