マイクロ流路内の細胞・粒子を高速撮影で解析 ― 集束と回転を捉える

本記事では、ハイスピードカメラPhantomのメーカーVision Research社が紹介する、Johns Hopkins大学の細胞と非球形粒子に関する研究事例を取り上げます。 同大学のSoojung Claire Hur教授の研究室で研究に取り組んだTakayuki Suzuki氏が、マイクロ流路内の集束や回転を高速撮影で調べる方法と、実験の信頼性を高めるための工夫を解説しています。
約1 msで視野を通過する粒子を捉える
マイクロ流体デバイスでは、小さな流路の中で細胞や粒子を移動させ、分析や分別に利用します。 その際、流体から受ける力によって粒子が特定の位置へ集まる慣性集束が、デバイス設計の手がかりになります。 どの位置に集まるかは、粒子の大きさや変形しやすさ、流れの条件などに関わります。
ただし、流路を通過する粒子の観察には高い時間分解能が必要です。 講演では、速度が約1 m/s、視野幅が約1 mmの場合、粒子が視野内にとどまる時間は約1 msになると説明しています。 この短い時間に複数の画像を取得することで、個々の粒子の位置や姿勢の変化を追えます。
細胞の集束位置を2方向から調べる
細胞の研究では、長方形断面の流路を互いに直交する2方向から高速撮影し、細胞を懸濁させる流体の性質によって、断面内の集束位置がどう変わるかを調べました。 流体の弾性や慣性、せん断薄化の影響を考えるために、細胞の位置だけでなく、移動速度やサイズも測定しています。
比較例として紹介された蛍光の帯状画像は、多数の粒子の平均的な分布を把握するのに役立ちます。 一方、高速撮影では粒子を個別に捉えるため、帯の内側にある複数の集束位置や、平均から外れた挙動を詳しく検討できます。 講演では、共焦点観察による断面情報も比較し、知りたい情報に応じて観察法を選ぶことを説明しています。
非球形粒子の回転と形状を組み合わせて解析
もう1つの研究では、L字やU字など、アルファベット形状の粒子を使いました。 球や軸対称の粒子より複雑な形を持つ対象について、流路内での回転と位置の関係を調べることが目的です。
この研究では1方向から撮影し、アルファベットの面が見える姿勢と、そこから90度異なる姿勢の情報を利用しています。
各フレームから粒子の角度や形状寸法を求め、それらを組み合わせて、壁側から見た形状や流れ方向の投影面積を計算しました。
回転の速さを測ることに加え、なぜその回転挙動になるのかを検討するための情報を得ています。
ポンプの設定と実際の粒子速度を照合
高速撮影で得られる速度は、実験条件を確認するためにも使えます。 画像上の移動距離を実寸に換算し、フレーム間の時間で割れば、粒子の速度を求められます。
アルファベット形状粒子の研究では、ポンプの設定が4通りでも、実測した粒子速度は連続的な範囲に分布しました。
講演では、柔らかいPDMS製デバイスが加圧によって変形し、定常状態に達するまでに時間がかかるためだと説明しています。
研究チームは注入直後から撮影し、この立ち上がりを利用して、4本の動画から幅広い速度条件のデータを取得しました。
一方、粒子を分別する条件を比べる場合には、この立ち上がりが解釈に影響します。
異なる位置に集束した理由が粒子の性質にあるのか、それとも速度条件がそろっていないためなのかを区別する必要があるためです。
粒子速度を実測することで、比較したい条件がそろっているかを確認できます。
光源と焦点の調整で解析できる画像を取得
短い露光時間で粒子の輪郭を捉えるには、十分な光量が必要です。
Suzuki氏は、顕微鏡の内蔵光源だけでは暗く不明瞭になる場合があり、高倍率かつ高速の撮影では、光源の選定を重視していると説明しています。
撮影時には、焦点面の位置と絞りを調整します。 焦点の合う範囲を広げれば対象粒子を捉えやすくなりますが、背景の微小な異物まで鮮明に写ることがあります。
対象粒子を捉えつつ、不要な背景を増やさないよう、合焦範囲のバランスを取っています。
簡単な画像処理から始め、測定値を検証
アルファベット形状粒子の解析では、粒子がない画像と粒子がある画像の差を取る背景差分を利用しました。
しきい値処理やエッジ検出で粒子を抽出し、輪郭と参照形状の差を評価して姿勢を求めています。
Suzuki氏は、まず計算負荷の小さい手法を試し、それで目的を達成できない場合に高度な手法へ進む方針を紹介しています。
自身の解析では、1実験あたり約1 TBのデータを一般的なノートパソコンで24~48時間かけて処理したと述べています。
これは発表者の実験と解析手順における実績です。
さらに、画像から得た数値は、現象を解釈する前に検証しています。
細胞の研究では焦点面を変えて直径を測定し、携帯型Scepter装置による測定と照合しました。
焦点位置によって直径の測定結果が変わることを確認し、画像解析の妥当性を確かめています。
これらの研究では、高速撮影から位置、姿勢、速度を測り、回転や集束の仕組みの検討と、実験条件の確認につなげています。
マイクロ流路内の現象を解析するには、撮影条件の設計から画像処理、測定値の検証までを一続きに考えることが役立ちます。
まとめ
ノビテックでは、本事例のように観察対象や撮影条件に合わせたハイスピードカメラの選定と、照明を含む撮影方法をご提案します。
マイクロ流路内の細胞や粒子の動きを捉えたい方は、対象の大きさや移動速度、観察したい現象を添えて、お気軽にご相談ください。



